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「惜しい」
見習いのころ
介助が上手くできなかった
「ごめんね上手くできなくて」と謝ると
こう言って励ましてくれた
その人は経営者だった
介護をしてあげているのでなく
介護を教えてもらっていると思った
「寒いからあなたは戻りなさい」
帰ることのできないその人の家を目指し
手をつなぎ歩く冬の夜
家に戻れるか不安でたまらないはずなのに
こう言って心配してくれた
その人は教師だった
そして「明日にしようか」とつぶやいた
 
「私は忘れてしまうかもしれないけど
あなたは私のこと覚えていてね」
その人は日々変わっていく自分に怯えていた
私はまるで親友のように
1つ1つの出来事に寄り添っていた
​ふと言われたこの言葉に続けてこう言ってくれた
「あなたは初めて優しくしてくれたお友達」
優しくゆっくりとその人が離れていくような気がした
「ご苦労さんでしたありがとう」
最愛の伴侶が先に逝ってしまったその人
最後に一目伴侶に会えるように
介助しながら葬儀に同行した
認知症で会話も難しいその人も
いつもと違う何かを感じているような表情だった
これは葬儀から帰る途中に
突然言ってくれた労いの言葉だった
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